質の悪い油(酸化した油・トランス脂肪酸)

酵素の働きを考える上で注意しなければならない栄養素があります。それは「脂質」です。近年はダイエット志向が強まり、油は悪い物だとし て闇雲に敬遠されることがありますが、そもそも脂質は体温の維持や脂溶性ビタミンの搬送、吸収などの役割も担っているため、三大栄養素にされるほど非常に大事なものなのです。

 

また、脂質は細胞膜の70%、脳の60%を構成しているため、脂肪がなければ人間は生体を維持することが出来ませんし、脳も機能することが出来ません。

 

しかし油(脂質)は性質上、酵素が分解するのに時間がかかり、多くの酵素が使われるので、摂り方を間違ってしまうと酵素を大量に浪費するうえ、体にも悪影響を与えてしまいます。

 

そのため、質の良い油を効率的に摂ることが重要になってくるのです。

 

まず、油には体内で合成されないために外から摂取しなければならない必須脂肪酸(多価不飽和脂肪酸)と呼ばれるものがあり、代表的なものにDHAや EPA、αリノレン酸(オメガ3脂肪酸)などがあります。

 

この3つは青魚などに多く含まれ、血中のコレステロール値を調整したり、脳機能を改善したりするなど、非常に質の良い油として知られています。これらオメガ3脂肪酸は積極的に摂ったほうが良いとされる油です。

 

同じ多価不飽和脂肪酸でも、リノール酸と呼ばれる油があります。このリノール酸はこれまで体に良いとされてきましたが、摂り過ぎた場合アラキドン酸と呼ばれる物質が作られ、炎症を起こす原因になったり、血管が矮小化したりすることが分かってきたため、必須脂肪酸ではありますが 無理に摂る必要はありません。

 

わざわざ摂らなくてもよい理由は、このリノール酸はサラダ油やゴマ油などに多く含まれているため、揚げ物やマヨネーズやドレッシングなどの調味料、スナック菓子など、サラダ油が使われた身の回りの食品を口に することで知らず知らずのうちに過剰摂取している可能性が高いからです。

 

したがってリノール酸が含まれた食品をあえて摂るというよりは、むしろ避けたほうが賢明だと言えます。

 

そのほかにも出来るだけ避けたほうが良い油があります。それは酸化した油です。油は空気にさらしておくとすぐに酸化してしまいます。その酸化した油を摂ると、血中に老化や動脈硬化の原因となる過酸化脂質が発生するほか、腸の汚れも進めるため、大量の酵素を消費させてしまいます。

 

したがって、一度使った油は再利用しないようにする、調理にはオリーブ油などの酸化しにくい油を使うといった工夫が必要になってきます。

酸化した油・トランス脂肪酸

酵素で消化が難しいトランス脂肪酸

さらに消化しにくく体に悪い油としては、近年よく話題にされる「トランス脂肪酸」が挙げられます。

 

トランス脂肪酸が人体に悪影響を与える最大の理由は、トランス脂肪酸とは自然界に存在しない物質であり、いくら時間が経過しても腐らないプラスチックのような存在だからです。

 

トランス脂肪酸が作られた原因とはそもそも、バターなどの乳製品が飽和脂肪酸と共にコレステロールが多く含まれているため、コレステロールを含まないうえ、 多価不飽和脂肪酸に富んだ植物油を摂ったほうが良いという考えがあったことによるそうです。そこでコレステロールの含有量が少ない植物油を固形にしたマー ガリンが生み出されたのです。

 

植物油である多価不飽和脂肪酸は、常温では液体で酸化しやすい油であるため、常温で固形状にして、しかも空気中に安定したものにするにはどうすればよいかが研究されるようになりました。その結果、多価不飽和脂肪酸に水素を添加するという方法が考えられたのです。それによって、普通の飽和脂肪酸とよ く似ており、少しいびつな脂肪酸である「トランス脂肪酸」と呼ばれるものが出来上がったのです。

 

このトランス脂肪酸は体内に入ると、酵素の力でも全く代謝できないため、形成された細胞膜に異常を起こしたり、糖尿病やホルモン異常、がんなどの原因になったりするとされています。

 

ちなみにトランス脂肪酸はマーガリンやショートニング、ファーストフードやスナック菓子、インスタントラーメンなどに使用されていると言われていますが、日本では規制がなされていないため、これらの食品に関しては、口にするのをなるべく避けたほうが良いと考えられています。

酸化した油・トランス脂肪酸