ここでは食物アレルギーと酵素の関係について述べています。
食物アレルギーの原因はタンパク質ですが、そのタンパク質が消化不良を起こして血液中に入り込んでしまうのを防ぐのに酵素は役立つと考えられます。またプロテアーゼなどの酵素はタンパク質を分解する働きがあるため、タンパク質が未消化のまま血中に入りこむことを防ぐことでアレルギーを抑えてくれると考えられます。
近年、子供を中心にして食物アレルギーに悩まされる方が急増するようになりました。「食物アレルギー」とは、食べ物を摂取することによって体に不利益な免疫反応を起こす現象のことです。
卵や牛乳、小麦、米、ナッツ類、魚や肉などの食べ物を食べると、じんましんやかゆみなどの症状をはじめとして、嘔吐や下痢、咳や呼吸困難などの症状が起こってしまうのです。さらにひどくなると意識消失などのアナフィラキシーショックが起こることもあります。
このような食物アレルギーが起こるのは、食品に含まれている消化されにくいタンパク質が原因です。
本来、タンパク質は消化酵素によってアミノ酸レベルにまで分解され、小腸から体内に吸収されるのですが、そばやピーナッツのなかには、消化酵素では分解されにくいタンパク質が含まれています。
そのタンパク質が血液に侵入することで、体にとって不利益な免疫反応を起こしてしまうのです。
また、乳幼児が食物アレルギーに悩まされやすい理由は、消化能力が弱いことに加えて、腸内細菌叢(腸内フローラ)が未熟であるため、腸内細菌がもつバリア機能も弱く、タンパク質などのアレルゲンを小腸から体内に摂り込んでしまうからだと考えられます。
乳幼児に食物アレルギーが多いのは消化能力が未熟でより多くのタンパク質が血液中に入るためであろうと思われています。また、強い食物アレルギーが引き起こすことが知られているそばの中のアレルゲンは消化液で長時間処理しても壊れにくいタンパク質です。つまり、他の食べ物よりも、大量のアレルゲンが血液中に移行しやすいのです。
(斎藤博久『アレルギーはなぜ起こるのか』)
この食物アレルギーは、「特異的IgE抗体」と呼ばれるものが、マスト細胞や血液中を流れる好塩基球に結合することで起こってきます。
そのため、食物アレルギーは免疫システムの問題が関わっていると考えられており、特に食物アレルギーの緩和には「制御性T細胞」という免疫細胞の存在が重要であることも示唆されています。
またアレルギーの症状全般は、腸管の免疫システムの異常と深く関わっているため、腸内細菌のバランスを整えることで消化管である腸の腸内環境を改善していくことが重要であると考えられます。
実際、食物アレルギーやアトピー性皮膚炎に悩まされる方の腸内環境は決して好ましいものではないとされていますので、その腸内環境を整えるのに酵素は役立ちます。
実際、食物アレルギーをすぐに治すことは難しいとされていますが、先述した通り、食物アレルギーの原因は、消化されにくいタンパク質が血液中に入り込むことです。そのようにタンパク質が血液中に入り込んでしまうのに拍車をかけているのには、
といったことだと考えられます。
これらには、食物酵素が含まれていない加工食品や加熱食が増えてしまったことや、必要以上の食物を体内に摂りこもうとする食べ過ぎ、よく噛まずに飲み込む早食いなどが関係しています。
よく噛まないで胃の中に食べ物が大量の放り込まれると、消化・分解するためにたくさんの消化酵素が必要になります。
そして胃液や膵液に含まれている消化酵素でも完全に分解できない食べ物は、消化不良を起こし、腸内で腐敗や異常発酵といった現象を発生させて腸内環境を悪化させてしまいます。
さらにアレルギーの原因であるとされるリーキー・ガット症候群と呼ばれる深刻な症状も引き起こしてしまいます。リーキーガット症候群が起こってしまうと、大きすぎて小腸の腸絨毛で吸収されないはずの栄養素の分子が、血液中に取り込まれてしまいます。
この消化不良やリーキー・ガット症候群により、最初から消化されにくいタンパク質が血液中に入り込んでしまううえ、本来はきちんとアミノ酸レベルに分解されて吸収されるはずのタンパク質までも血液中に取り込まれてしまうことが考えられます。
そしてそれらのタンパク質を腸管の免疫システムが異物と見なし、抗体で包み込んでしまうという過剰な免疫反応を起こしてしまうのです。その結果としてアレルギー症状が起きてくるのです。
つまり、食物アレルギーが起こってくる大きな原因のひとつは、体内の酵素が不足し、消化管の消化力が弱まってしまっていることなのです。
そのため、このような食物アレルギーをはじめとしたアレルギー症状を少しでも緩和するには、日頃から消化不良を避けるようにすることが大切です。
具体的にはまず、食べ過ぎや早食いを避け、よく噛んで食べ物を食べるようにすることが重要です。特に肉や魚などのタンパク質が多く含まれた食材を口にする時は、意識的によく噛んで食べるようにすることが必要になります。
また食物酵素が含まれた新鮮な野菜や果物、発酵食品などを食生活に採り入れることも必要です。
タンパク質を分解する食物酵素が含まれた食材は、普段の食事のタンパク質の消化を助けてくれます。そのほか発酵技術を利用して作られた新谷酵素などの酵素サプリメントにも消化酵素が含まれているため、タンパク質の消化を助けたり、体の中の未消化物を分解したりしてくれます。
ちなみに酵素は一般的にはタンパク質の一部であるとされていますが、加熱されていない食物や酵素サプリメントに含まれている酵素自体が食物アレルギーを起こすことはありません。
さらに、食物アレルギーが起きてしまう原因のひとつには小腸の免疫システムが関係していると考えられるため、先程述べた通り、腸内細菌のバランスが整うよう、ビフィズス菌や乳酸菌などの有用菌を増やすことで、腸内細菌の多様な集まりである腸内フローラを改善していくことも大切です。
腸内細菌は消化酵素を分泌してくれますし、腸内細菌のなかには炎症やアレルギー症状を抑制する種類もいるとされています。
また腸内フローラを整えることは、腸管のバリア機能を回復させることにつながるため、未消化のタンパク質などが体内に入り込むのを防ぐことにもなります。
アレルギーの発症原因は、腸管のバリア機能が低下していることも深く関係しているため、酵素だけではなく、腸内環境の改善によるアレルギー抑制効果についてもかなり期待が持てると思われます。
ちなみに腸内環境を改善するのに役立つのは、乳酸菌、食物繊維、オリゴ糖、発酵食品などです。
また、これら腸のための栄養成分を食事からなかなか摂りにくいという方は、「乳酸菌革命」というサプリメントを利用することがおすすめです。
さらに、乳酸菌と酵素で腸内環境を改善し、アレルギー対策をしていきたい場合は、活きた酵素に加え、乳酸菌が含まれている「新谷酵素」や「二年熟成 みやびの植物酵素100」といった酵素サプリメントも有効です。
それに加えて、腸内環境の改善に特化したおなかカンパニーROTTSの「MetaBioメタバイオ 生酵母・生酵素・生麹」も、管理人イチオシの酵素サプリメントです。
このMetaBioメタバイオにはアミラーゼ(糖質分解)・プロテアーゼ(タンパク質分解)・リパーゼ(脂質分解)など5種類の活性型酵素が配合されています。
参考文献
鶴見隆史 『「酵素」が免疫力を上げる! 病気にならない体を作る、酵素の力』 永岡書店
鶴見隆史 『酵素の謎――なぜ病気を防ぎ、寿命を延ばすのか』 祥伝社新書
ディッキー・フュラー 竹内進一郎訳 『病気を癒し、老化を防ぐ酵素の治癒力』 現代書林
藤田紘一郎 『アレルギーの9割は腸で治る!』 だいわ文庫
斎藤博久 『アレルギーはなぜ起こるのか ヒトを傷つける過剰な免疫反応のしくみ』 講談社
光岡知足 『腸を鍛える 腸内細菌と腸内フローラ』 祥伝社