酵素でアレルギー症状改善のポイント
酵素を日常的に摂るようにすることはアレルギー症状の改善にも役立ちます。
そもそもアレルギーとは、一般的に食物やダニ、花粉など、本来は病原性のないものに対して免疫細胞が特別な抗体IgEを作って、過剰な反応を起こしてしまう現象のことを指します。
一度免疫細胞(Bリンパ球)によって作られたスギ花粉の抗体IgEは、例えばスギ花粉が再び体内に侵入してきた際に、敵と見なして攻撃します。しかし、厄介なのは、その前に抗体IgEが鼻や口、皮下などの粘膜に存在している肥満細胞にくっついてしまうことです。
この肥満細胞の中には、ヒスタミンやセロトニン、ロイコトリエンなどの化学伝達物質がパンパンに詰まっているのですが、くっついた抗体IgEの中の二つに花粉が付くと、肥満細胞が破れてしまい、ヒスタミンやセロトニン、ロイコトリエンをまき散らしてしまいます。
これらのまき散らされた化学物質が粘膜に刺激を与えると、粘膜は炎症を起こしてしまうのです。その結果、くしゃみや鼻水、かゆみといった症状が現れてきます。
花粉症などのアレルギー症状が増えた理由
鼻炎や花粉症、アトピーといったアレルギーの症状は、1970年代頃から増え始めたと言われています。昔はそれほどアレルギーの症状に悩まされる方がいなかったのに、近年、急激にアレルギー患者が増えてしまった背景には、免疫力の低下が考えられます。
ここでいう免疫力の低下とは、清潔志向のために細菌やバイ菌を徹底的に社会から排除した結果、生物としての人間がもつ「生きる力そのもの」が弱まってしまったということです。
生きる力としての免疫力とは、自然治癒力でもあり、その自然治癒力は、細菌やウイルスなどと免疫細胞が忙しく戦い続けることで、培われていきます。そして、免疫機能のかなめは、免疫細胞が集中している腸(腸の粘膜の腸管)の腸内細菌が担っています。
実際、菌がいない環境で育てられた動物は、免疫系の発達が不十分であることが分かっており、人の腸内においても、ビフィズス菌などの善玉菌が少なければ、幼少期の子供はアトピー性皮膚炎をはじめとしたアレルギー症状が発症しやすいと言われています。
また、アレルギー症状に悩まされる方は、免疫細胞であるT細胞のうち、細菌やウイルスに対処する「Th1」と呼ばれるものよりも、アレルギー発症に関わる「Th2」のほうが多いということが分かっています。
そのように免疫システムのバランスが崩れてしまう理由は、どうやら子供の頃から清潔すぎる環境で育ったことであると考えられているのです。
しかし近年、腸内に生息するビフィズス菌や乳酸菌などの腸内細菌の一部は、T細胞のバランスを整えることでアレルギー症状の抑制の働きをすることが分かってきました。
その腸内細菌は、善玉菌と悪玉菌、さらにそのどちらにもなる日和見菌がおり、それらがそれぞれの役割を果たし、うまくバランスを取りながら群生しています。
そのため、アレルギー症状を少しでも緩和するためには、腸内細菌のバランスをうまく整えて、腸内環境を改善していくことが重要になってきます。実際、アレルギーに罹っている子供の腸内環境は、ビフィズス菌の数が少ないなど、決して良い状態ではないと言われています。
つまり、免疫力(自然治癒力)を高めたり、免疫機能を正常に働かせたりするには、悪玉菌が健康に悪影響を与えるほど増えないように気をつけながら、酵素や食物繊維などを摂るなどして、ビフィズス菌や乳酸菌など腸内の善玉菌を増やしていく必要があるのです。
アレルギーの症状は、免疫細胞が過剰反応を起こし、病原性のないものまで敵と見なしてしまうことが引き金になりますが、食物に関しては、細かい分子レベルにまで分解されなかった食べ物が、血液中に取り込まれてしまうことが問題になってきます。
そのようなことが起きる原因としては、食べ過ぎと消化不良が挙げられます。
一度に大量の食べ物を胃の中に放り込んだり、よく噛まないで飲み込んだ入りすると、消化酵素による食べ物の分解が間に合わず、小腸に届くまでに消化不良を起こしてしまいます。
たんぱく質や炭水化物、脂質が消化不良を起こしてしまうと、食べ物が大腸に停滞して腐敗や異常発酵、酸敗といった現象を起こしてしまいます(詳しくは「酵素の働き」を参照してください)。
また、小腸内の環境が悪化することによって、「リーキー・ガット症候群(腸管癖浸漏症候群)」 と呼ばれる症状も引き起こされてしまいます。
このリーキー・ガット症候群とは、本来は大きすぎて小腸で吸収されないはずの栄養素の分子が、小腸の腸絨毛が炎症を起こすことによって出来た、テニスラケットのガットが緩んで広がってしまったような部位から入り込んでしまうことです。
また、このリーキー・ガット症候群は、腸内の悪玉菌が出すアルカリ性物質によって腸の粘膜が溶かされ、腸壁が爛れることによって起こり、食物アレルギーを引き起こす大きな原因であると言われています。
通常であれば分子レベルまでに分解された栄養素しか吸収出来ないはずなのに、そこに例えば100個ものアミノ酸が連なったたんぱく質が入ってきたら、免疫システムはそれを異物と見なし、抗体で包み込んでしまうのです。
このように免疫システムが体を守ろうとする行為によって引き起こされるのがアレルギーなのです。
近年、花粉症やアトピー性皮膚炎など、アレルギーの症状に悩まされる方が急増している原因の一つには、先程も述べましたが、消化不良を起こすほどの大量のたんぱく質を摂っていることが考えられます。
たんぱく質とは100個以上のアミノ酸がつながっているもののことを言いますが、この100個以上のアミノ酸の鎖を、消化の役割がある酵素が断ち切っているため、たんぱく質を過剰摂取してしまうと、それだけ酵素に負担がかかってしまうのです。
また、近年は、小腸から吸収されるはずのない10~100個のアミノ酸の連なりであるポリペプチドが小腸から血液に入り込み、体内で栄養にならずにヘドロのように体中に溜まっていくことが分かっています。
したがって、リーキー・ガット症候群によって、完全に分解されていない食物が血液中に取り込まれ、アレルギー症状が引き起こされるのを防ぐためには、食物酵素を摂り入れることで出来るだけ体内の消化酵素を増やし、消化の能力を活性化することが重要です。
また、それと同時にたんぱく質や、消化に多くの酵素が必要になる質の悪い油や食品添加物などを減らしていくことも大切です。
そのようにして体内の酵素に負担をかけないようにすることが、アレルギー症状の緩和や改善には必要になってきます。
さらに食事の際には、少食を心がけること、よく噛んで食べることも重要です。そのほか、砂糖(ショ糖)やアルコールの過剰摂取、喫煙、薬の飲み過ぎなども、腸内の環境を悪化させ、リーキー・ガット症候群が起こる原因になるため、なるべく控えた方が良いとされています。
参考文献
鶴見隆史 『「酵素」が免疫力を上げる! 病気にならない体を作る、酵素の力』 永岡書店
鶴見隆史 『酵素の謎――なぜ病気を防ぎ、寿命を延ばすのか』 祥伝社新書
藤田紘一郎 『アレルギーの9割は腸で治る!』 大和書房
斎藤博久 『アレルギーはなぜ起こるのか ヒトを傷つける過剰な免疫反応のしくみ』 講談社
光岡知足 『腸を鍛える 腸内細菌と腸内フローラ』 祥伝社
永田良隆 『油を断てばアトピーはここまで治る』 三笠書房
南清貴 『究極の食』 講談社インターナショナル